保育園の保護者で運営する父母会活動。親子の交流イベントを企画したり待機児童問題に取り組んだりと活発に活動する団体もあれば、人員確保や活動継続に困る例も多いです。専門家は「親同士がつながり、園とともによりよい保育を実現する場として活用して」と呼びかけます。

 

  • 共働きで余裕なく

 保育所の父母会は保護者で作る任意団体です。コンサートなど親子で楽しめるイベントを企画したり、園生活の写真を配り文集を作ったりします。行政に要望書を出し、保育制度の勉強会を開くこともあります。会長、会計といった役職を置く会もあれば、役員は全員事務局とする場合もあり、運営方法はまちまち。会費は年2,000円前後が一般的です。

 保育所を利用する保護者ら400人が作る「保育園を考える親の会」の2013年のアンケートで、「子どもの通う園に父母会がある」と答えたのは、全回答者87人のうち57人。会代表の普光院亜紀さん(59)は「新設園の開設に伴い父母会がない園が増えています。親の大半がフルタイムで働き、時間の余裕がなく活動に消極的なのでは」と話します。

 千葉県船橋市の認可保育所父母会が加盟する市保育園父母会連絡会の今仲希伊子さん(36)によると、役員決めが難航したり、父母会費の未払いがあったりと、課題を抱える園も多いといいます。連絡会に対しても、会議参加や会費が負担として「脱退したい」との声が上がることもあります。「園の垣根を越えて親子が交流したり保育制度を学んだりすることが保育の充実につながる。活動を発信して理解を得る努力が不可欠」と今仲さんは話します。

  • 連携活動が奏功

 東京都武蔵野市の市立認可保育所で2015年に父母会長を務めた加茂聖子さん(35)は、負担軽減を目指し、年間スケジュールと仕事内容をデータ化しました。「何年にもわたる紙の資料を引き継がれても、父母会は面倒という印象を与えるだけ。活動の取捨選択と『見える化』を目指した」。会議も減らし、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などでの意思疎通を心がけました。

 当時の役員で第2子の育児休暇中だった森季美子さん(35)らは、認可所の増設を目指した活動を始めました。きょうだい別園になる可能性が高く「保活」に直面したことから、他園の父母会や保育士らにも協力を求め、認可保育所が少ない吉祥寺エリアに新規園増設を求める署名活動を展開。約4,000人分を集め、今年の6月議会で陳情は全会一致で採択されました。邑上守正市長も吉祥寺エリアに認可所を新規開園すると発表しました。森さんは「父母会のネットワークがあったからこそ。なければ独りで悩んで、諦めていたかもしれない」と振り返ります。

 父母会のない園では、保育内容に満足できるかは、園の姿勢次第になります。子どもが武蔵野市内の私立認可所に通う女性会社員(34)は、父母会がないことに不満はないが「園が親との意見交換にオープンであることが大前提」といいます。今は園の保育理念に共感でき、園にも親同士の交流会を設定する姿勢があります。だが「運営に意見する場合や経営方針の変化、トラブルがあったときなどは保護者のつながりが重要になる」と感じています。

 一方、関東地方の私立認可所に息子を通わせる30代の自営業の女性は「コミュニケーションを取る手段がない。父母会があればよかったのに」と悩みます。時間外保育料の値上げや預かり時間の変更など、説明がないまま一方的に通告されることが多く、疑問を感じても保育所不足で退園はできません。「子どもをいわば『人質』に取られている状況。園と余計なあつれきは起こせない」と、単独で意見を言うことには二の足を踏みます。

 「世田谷保育親の会」が10年に区内の認可所にアンケートしたところ、父母会は全90園中少なくとも37園にありました。また「父母会がない(設置準備中)」と答えた13園のうち、「父母会設置を支援する意向があるか」との問いに「支援したい」と答えた園は6園、「どちらともいえない」が7園でした。自身も父母会を設立した経験がある同会事務局の後藤玲子さん(52)は「親と園が互いに理解し協力体制を作るためにも、行政から園に支援するよう働きかけてもいいのでは」と指摘します。

 父母会を作るポイントとしては▽まずは3人程度から有志を募る▽園長の理解を得る▽園への掲示で広く周知する−−などを挙げます。活動を続けるには「無理なく楽しく」が第一で、園との定期的な交流や、他の父母会とつながることも大切です。

  • 設置義務ある国も

 諸外国の保育制度に詳しい日本総研主任研究員の池本美香さん(50)は「先進国では、保育への親の参画は、保育の質向上の重要な柱として認識され、制度的なバックアップもある」と指摘。ドイツ、ノルウェー、韓国などでは親の代表と園側の協議会設置を義務づけるなど親の参画に法的な位置づけがあります。親の保育参加や親同士の助け合いを促し、園や行政の負担軽減につなげる狙いもあります。池本さん自身、長男(5)を預ける都内の区立保育所に父母会がなく、園に親の意向を伝える難しさを感じてきました。「日本では、保育所は親の就労支援という意識が保育者にも保護者にも強い。一番大切なのは子の福祉。保育の質向上には親をどう巻き込むかが一つの鍵」と指摘します。