4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史

4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史

  • 作者: 村瀬秀信
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/06/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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・溢れ出るベイスターズ愛

・親会社がコロコロ変わってくれたお陰で読めてよかったです

・村田さんも出てくればよかったのに

 

とにかく取材量がすごいです。元球団社長や会長、TBS時代のGMへの取材も貴重ですし、何よりFAなりで出て行った選手たちもきちんと喋っているのが良かった。

あの98年、なぜ横浜ベイスターズが優勝できたのか?そしてなぜ翌年からすぐに再び低迷の時代に突入していったのか?という話から始まります。その優勝に深く関わった琢朗さん、谷繁さん、馬主“大魔神”佐々木さんたちの言葉は重いです。そして何より個人的には、内川選手の登場が効いてると思いました。まぁ内川選手といえばネットでは通称“チック”なんていう呼び名があるわけですけども、彼がきちんとこの本の中であらためて当時の自分の真意や、それこそよくネタにされている「横浜を出る喜び」とかね、そういう発言について口を開いていて、それがすごくグッと来るんですよ。

 

「ホークスへの移籍を決断した時に、僕の発言の仕方が悪くて『横浜を出ることの喜び』という風に勘違いされてしまいましたけど、あれは違います。(中略)インターネットとかで、僕のことが書かれているのも知っていますよ。本当に僕の伝え方が拙かったんです。(中略)正直、あの記事を読んだら、自分でもなんだコイツって思いますよ。なんでこんなことになってんだよ、そうじゃねぇよ……と否定しようとするんですけど、もう言えば言うほど、どんどん深みにハマっていくんですよね」(P253-254)

 

「歴史は勝者によって記される」などという言葉もありますが、この横浜ベイスターズという球団には基本的に敗北の歴史(「4522敗の記憶」)が積み上げられてきているわけです。そうして敗れて(あるいはその敗北の歴史の重さに打ちのめされて)去っていった人たちがひとつひとつ自分たちの記憶を語って歴史をつむぎ、それを著者の村瀬さんが無類の横浜愛でまとめあげているのが素晴らしい。

それと、村瀬さんといえばの中野渡a.k.a“口の悪いモツ鍋屋”の木塚愛の所以がよくわかってすごく盛り上がりました(BL的な意味で)。これはわたりさんの『ハマの裏番 モツ鍋屋になる』にも書いてありましたけど、01年森監督政権下の話で「木塚なんか、投げすぎて最後のほう耳聞こえなくなってんだよ。移動中の新幹線なんて『高校教師』のラストシーンみてぇに2人で指絡めて死んだように眠ってたからな」という話、なんで指を絡める必要があったんですかね……目的地についてもアナウンスが聞こえないから? わたりさんなりのおもしろ小話なんでしょうか。理解が足りなくてすみません。

この本の話をカープファンの知人にしたところ、「優勝から遠ざかっているのはカープのほうが長いんだから、こっちもこういう本出てほしい」と言ってましたが、ベイスターズの場合はなまじ98年に優勝してしまったことで、「なぜあの時は勝てたのに、いつもダメになってしまうのか」という、より屈辱の歴史が際立つ格好になっているように感じます。それから、カープと違って親会社がコロコロコロコロ変わってきたことは、球団としてはとても不幸なことですが、本を書くにあたっては良かったんじゃないでしょうか。だってカープのはじめちゃんのすぐ近くにいた人とか、そんなペラペラかつての内情とか喋れないでしょう、たぶん。

第8章「ホームゲーム」の第1項「横浜に捧げる言葉」のタクローさん→内川選手の並びは涙なしには読めません。読めませんが、ここでも内川選手、

 

「僕がホークスに来て勝てているからといって、ベイスターズのことが気にならないかと言えば、そうじゃないんですね。(中略)横浜は大分の親元を離れてはじめて住んだ街ですし、僕にとっては故郷みたいなものです。そこでお世話になった人、面倒見てもらった人がいて、今の僕が作られていますからね。だから、一般的な常識で考えてもね。その故郷に恩知らずだとか、言いたいこと言って出ていったって……。言われるような……そんなこと思うわけないんですから」(P290)

 

やっぱめっちゃ気にしてるんですねぇ。そりゃそうですよね。ちょっと「内川聖一」って検索かけたら「内川聖一 発言」「内川聖一 畜生」とかGoogle先生がサジェストしてくるわけで、「俺が何したってんだ」って気持ちにもなりますよね。

ところで、ことほどさように内川選手はいろいろ喋ってるんですが、彼の翌年にFAして巨人に行った村田選手はこの本に出てこないんですよね。広島に行ったタクローさん、現中日の谷繁さんも出てるんですが、やっぱり巨人は取材統制的なサムシングが厳しいのかな。読みたかったですけどね。DeNAになった12年というタイミングで出ていった人の心中は気になりますので。